2021-05-05

ビジネスを身近に!「新三方よし」理論


三方良し

『売り手によし、買い手によし、世間によし』
近江商人の経営哲学のひとつとして「三方よし」が広く知られている。「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる」という考え方だ。自らの利益のみを追求することをよしとせず、社会の幸せを願う「三方よし」の精神は、現代のCSRにつながるものとして、伊藤忠をはじめ、多くの企業の経営理念の根幹となっている。
近江商人と三方よし(https://www.itochu.co.jp/ja/about/history/oumi.html)

 

近江商人の経営哲学として知られてきた「三方よし」の別解釈。

本来は、売り手と買い手と世間体(社会貢献)の満足につながる商いが、商売繁盛を永く続く秘訣として語られます。

しかし、経営哲学は経営者や起業家などの高い視点で語られるため、より身近に感じられるように落とし込み、ビジネスに応用できる解釈を加えたのが「新三方よし」理論です。

 

真髄は、仕事を取引先との交渉など「点」で捉えるのではなく、商流として「線」で捉えること、利益を受け取る順番を守ることです。

 

・・・・・

例えば、自身がメーカーに勤めているとします。

 

消費者 → 運送会社(取引先) → 会社(自社)

 

登場する3者は、①商品を購入する消費者、②商品を配送する運送会社、③商品を製造する自社です。(②は他の取引先へ置き換え可能です)

①消費者は商品を購入で利便性(利益)を得て、②運送会社は配送費による売上(利益)、③自社は商品販売による売上(利益)を得ています。

 

逆に不利益になるのは、①消費者が必要のない商品をうっかり買った(不利益)、②運送会社が適切な売上を立てられない(不利益)、③薄利多売で自社に利益が残らない(不利益)場合になります。

 

つまり、①に良い商品を届けようとするあまり、②に対して過剰な値引きを要求するのは良くありませんし、①に対して嘘の広告や誤解を招く表現で無駄に商品を買わせることも同様に良くありません。

 

ベンチャー企業や中小企業などの新規参入者にみられるダンピング合戦があります。

消費者への利益を最優先にするあまり、行き過ぎた低価格で自社の利益が後回しになり、結果として従業員に無理な努力(低賃金労働)を強いることになります。

短期集中で薄利多売を行い、利益や借入を原資に競争力をつける戦略も、成功すればよいですが成功も失敗もせず撤退タイミングを逃し、薄利多売状態から抜け出せない企業も見受けられます。 

当然、永く商売繁盛を続ける観点からはマイナスで、今回のコロナ禍のタイミングなどなにかの拍子で商売が立ち行かなくなります。

 

もちろん、短期的にビジネスを成立させ、「買収」や「IPO」を目的にしたり、「ブランドの雰囲気を売る」企業もあるため、一概に良し悪しは言えません。

ブランドビジネスなどは、消費者の満足と取引先への十分な利益、自社の十分な利益を満たす優良な長期商売繁盛ビジネスになり得ます。

 

例えばユニクロは、「価格の安さ」と「高機能」で参入し、当初は薄利多売の色が強かったですが、差別化やブランドの確立にも成功したため、今では「低価格」のイメージは払拭できた成功事例です。(後続は、ワークマンが挙げられます)

 

ユニクロパターンで攻めるなら、「価格の安さ」で認知を獲得したあと、「差別化要因」を確立できるかが大切なポイントになります。


・・・・・

「新三方よし」理論は、企業間の商流だけでなく自社内の流れにもあてはめることができます。

 

会社(自社) → 上司 → 自分自身

 

登場人物は、①会社(自社)、②上司、③自分自身 になります。

①会社のビジョン達成や売上・利益(利益)があり、②上司は会社の目標達成・評価(利益)を得て、③自分自身は、上司のニーズに応えることで評価=昇給昇進(利益)が得られます。

 

多くの社会人が陥りやすい罠・間違いは、「会社(①)のビジョンに共感しました」といいつつ、「上司(②)のニーズを満たしていない」場合です。

本来ならシャンパンタワーのように、上から注がれるシャンパンがピラミッド状のシャンパングラスに順々に注がれていく様が美しいですが、現実ではうまくシャンパンが流れないこともしばしば発生します。


会社のニーズと上司のニーズが噛み合っていないとき、ねじれ国会のような状態で意思決定(判断)をするときに、どう立ち振る舞ったらよいかを誤ってしまうのです。

正解は、「上司のニーズを満たしつつ転職活動をすすめる」になります。


先程から伝えている通り、「新三方良し」理論では、ビジネスの商流を大切にしています。

より俯瞰した立場で眺めると、

 

消費者 → 取引先 → 自社 → 上司 → 自分自身 


の流れがあり、流れに関わる人(ステークホルダー)が左から順に満足していれば、自然に右側にいる自分自身の利益=昇給昇進も叶えられることになります。

 

流れが歪んでいると感じる場合は、中長期的に商売繁盛が続かないか、自分自身の心身の健康に高いリスクを伴う可能性があります。

しかし、サラリーマンとして給与を貰っている以上、上司のニーズを満たすことは必須になります。

そのため、短期的には上司のニーズに応え結果を出すことに注力する(市場価値を獲得する)とともに、中長期的には、より自分自身の価値観に合致した「新三方よし」企業を探すことが正解となります。

 

ドラマなどでは、上司を飛び越え社長に進言をして、大活躍する様が描かれますが、現実で同じことをすると成功するメリットより、失敗するデメリットの方が大きくなります。

当然ですよね? サラリーマンはチーム仕事です。

会社や仕事はよくマラソンに例えられますが、飛び越えられた上司や周りにいる人たちは、一連の出来事をみて一定数は不快に思います。

会社に長く居れば居るほど、不快に思っている人たちは将来的な反対派(抵抗圧力)になりかねません。(理屈ではなく感情的な意味合いで)


そのため、不義理をせず、着実に結果を残していくには、会社の理念や消費者目線からの流れを大切にするとともに、現実的に仕事をするにあたっては、直属の上司から信頼獲得を第一義とし、業務の領域を徐々に広げていくことを理解する必要があります。

上司からの信頼獲得と会社の理念や消費者目線をうまく飲み込めないと、「意識高い系の罠(落とし穴)」にハマり、思うように仕事で結果を出せず、市場価値が得られない悪循環に陥ります。(綺麗事ばかりで結果を出せないなどと言われる)


「新三方よし」理論を理解し、多くの人が一緒に働く人たち(ステークホルダー)の満足を得られれば、世の中、今よりもご機嫌に生きられる人が増えるはずと信じています。