2021-09-04

「お金は人の命より重い」の検証と、刑法のついての記録~人の命は無価値?



 

「お金は人の命より重い」と言われますが、本当でしょうか?

 その根拠となっているのは、刑法の罪の重さ(順序)のようです。

一生縁がないと思いますが、「重犯罪と通貨偽造罪」と「命の重さ」についてまとめます。

 

トピック

・刑罰と罪名のまとめ
・「お金は人の命より重い」の検証
・命の重さ、命の値段について
・まとめ

 

 

・刑罰と罪名のまとめ

刑罰の重さ(順序)と簡単な内容説明は、以下の通りです。

主刑	生命刑	死刑	1	絞首、合計19種類 	自由刑	懲役	2	刑務所に拘置、刑務作業を強制 		禁錮	3	刑務所に拘置、刑務作業は任意 		拘留	5	拘留場に1日~29日の範囲で拘置 	財産刑	罰金	4	1万円以上 		科料	6	1万円未満、前科はつく 付加刑		没収	–	単独での言い渡し不可(付加)
引用(https://tfutaba.com/keibatu_shurui/)

 

死刑になりうる犯罪(主要18種)については、以下の通りです。

死刑になる主要犯罪18種		重さの順序	最小	補足 刑法犯	内乱罪	2	無期禁錮	革命やクーデター 	外患誘致罪	1	死刑	外国と共謀し、日本に対して武力行使を誘発(テロ組織は含まず) 	外患援助罪	8	2年以上の懲役	外国からの武力行使時に加担、協力 	現住建造物等放火罪	6	5年以上の懲役	人がいる建物、電車、船などに放火 	激発物破裂罪	6	5年以上の懲役	人が中にいることが明らかな建物、電車、船などを爆発 	現住建造物等浸害罪	7	3年以上の懲役	水を溢れさせて、建物、電車、汽車などに損害(ダム決壊など) 	汽車転覆等致死罪	2	無期懲役	電車や船などを転覆、破壊した結果、乗客などが死亡した場合 	水道毒物混入致死罪	6	5年以上の懲役	水道に毒物を混ぜた結果、人が死に至った場合 	殺人罪	6	5年以上の懲役	人を故意に殺す犯罪(放置で死亡が予想される場合も適用の可能性) 	強盗致死罪	2	無期懲役	強盗を行った結果、人が死亡 	強盗強姦致死罪	2	無期懲役	強盗の際に、強姦などを行い、その結果人が死亡 特別刑法犯	航空機強取等致死罪	2	無期懲役	ハイジャック中に人が死亡 	航空機墜落致死罪	3	7年以上の懲役	飛行中の航空機を何らかの方法で墜落させ、人を死に至らしめる 	爆発物使用罪	4	7年以上の懲役・禁錮	他人の身体、財産を侵害するために爆発物を使用 	人質殺害	2	無期懲役	人質を殺害 	組織的殺人	5	6年以上の懲役	組織的に殺人をする犯罪 	海賊行為致死	2	無期懲役	海賊行為によって人が死亡 	決闘致死	6	5年以上の懲役	当事者間で合意して、暴力を行使して死に至らしめる

引用(https://keiji-pro.com/columns/181/)

 

通貨偽造については、以下の通りです。

引用(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045)



・「お金は人の命より重い」の検証

殺人罪は、「最低5年以上の懲役~最大死刑」で、組織的殺人は、「最低6年以上の懲役~最大死刑」です。

それに対して通貨偽造罪の場合は、「最低3年以上の懲役~最大無期懲役」です。

 

ケース・バイ・ケースですから、一概に比較はできませんが、最低ラインだけ見ると「人の命のほうが重い」ことになります。

 

簡単のために通貨偽造罪の「重さの順序」も、「死刑になりうる犯罪(主要18種)」の序列と合わせて表記していますが、すべて「7」以下なのが分かります。

 

また 、「死刑になりうる犯罪(主要18種)」では、人が死亡しているときの最低ラインが「5年以上の懲役」ですが、人が死んでいない場合でも放火や爆発物使用では、最低ラインが「5年以上の懲役」となり、木造住宅の多い日本の事情が反映されていると見れます。

「火に対しては、かなりシビア」は新しい発見でした。

未成年への死刑適用は18歳からの慣例も複雑ではありますが、事実として抑えておく必要があります。

 

 

・命の重さ、命の値段について

弔慰金は、民間サラリーマンの場合800万円、公務員の場合2660万円。
職種によっては「賞恤金(しょうじゅつきん)」があり、490万~3000万円。
命の危険を伴う職種が対象で、その公務中に死亡した際に、功績を称えて支給される弔慰金。
ただし、賞恤金は「二重取り」になるため、賞恤金の対象者は災害弔慰金の500万円を受け取らない慣例。※週刊ポスト2012年2月17日号(https://www.news-postseven.com/archives/20120207_85668.html?DETAIL)

イラク派遣などで死亡した自衛官には、最大9,000万円の弔慰金が支払われるなどの措置もあり、過去に話題になりました。


ただし、「命の値段」ではなく、資本主義に則った「損失価値の補填」や「需要に対し供給が少ないことへの上乗せ」と考えられます。


「損失価値の補填」は、例えば交通事故で怪我をした場合、事故のせいで仕事を休む必要が発生しますが、その場合の休業補償金は本人の時給換算になります。

生み出す価値が高いほど、結果的に金額が大きくなるだけで、その人の命の値段とするのは後付けで、「本来なら得られていた対価」を補填しているに過ぎません。


「需要に対し供給が少ないことへの上乗せ」も、需給の原則の通りで、需要が高く供給が少ない場合、希少価値が高くなるため価格は吊り上がります。

死ぬ可能性の高いイラク派遣を皆嫌がるからこそ、志願した人への手当は手厚くなります。

また生涯賃金の補填と解釈すれば、「損失価値の補填」といえます。



・そもそも人の命に価値はあるか?

「死刑になりうる犯罪(主要18種)」を読んでいて気づくのは、国に対する侵略行為や他人に対して権利を侵害する行為に、より重い刑罰が科されていることです。 


つまり、「他人(国)の権利を侵害するな!」に尽きるのではないでしょうか。

 

他人の権利をいちいち説明するのが面倒だから、「人の命は大切」と教えることで、「他人の命を奪う=他人への権利侵害」を説明している気がします。 


それならば、自殺や安楽死、尊厳死はどうなるのか。

映画『フェアウェル』の中では以下のように語られています。

命は自分のものだと思ってるだろ?
東洋と西洋では違う
自分だけの命じゃない
家族みんなの命だ 

引用(https://www.youtube.com/watch?v=l1l9UwY3q4g)

 

自分の命を奪うことは、家族に対して権利侵害である、と主張しています。



・まとめ

いかなる場合であっても、「他人の権利を侵害する」ことは許されません。

多様性や平等社会の根底にあるのも、「自らの権利の行使」や「反権利侵害」であるはずで、現代人が抑えるべき項目です。

語られている内容が、「権利を行使」しているのか「侵害」しているのかをベースに物事を判断、進めると議論が幾分かスムーズになります。