2021-05-31

映画『127時間』

 

 ~ざっくりあらすじ~

アメリカの自然の岩場をMTBで走るのが大好きな青年の実話ベースのお話。

いつもと同じ、慣れたコースを走り、いつも通り帰宅するはずだった。しかし油断もあり、落石に右腕を挟まれ、谷底から動けなくなってしまう。辺りには誰も居ないため助けも求められない。

死を目前にして初めて自分の人生と向き合い、恋人とやり直したい後悔の念に駆られる。生命の限界を超えた127時間後、主人公は〈決断〉する。

~感想~

実話ベースだし、そうなりますよね、って感想でした。

同じ実話ベースでも、『光にふれる』と違った点は、ストーリーへの共感が薄かったことに尽きます。

独り善がりの青年が死にかけて、周囲の大切さに気づきワガママを少し改めましたって程度の話。途中、ASMR を駆使した視覚・音響効果で、わりとイケメンである青年のいろいろな行動が、間近で感じられるような息遣いとともに感じられますが、女性などが俳優に首ったけでもない限りは「誰得?」状態でした。

個人的には、白昼夢エンドでも良かったような気がして、実話ベースだとストーリーに共感できるかが大きな分かれ目になるため、注意が必要になります。


監督・脚本・製作:ダニー・ボイル×作曲:A・R・ラフマーンの組み合わせは、『スラムドッグ・ミリオネア』で強烈なインパクトを受けただけに期待値がもの凄くあがっていたけど、今回に関しては、強烈さが足りず身の丈の生活みたいな内容だったので、その期待との差が色濃く出てしまいました。

もう少し、コロナで孤独を味わっているときに観られたら、映画を観らながら「ワガママ言ってて、申し訳ない」って気持ちで、心動かされたのかもしれません。

 

2021-05-21

相手は神様か? 新約「お客様は神様」のすすめ。


「お客様は神様です」のフレーズの生みの親・三波春夫氏のサイトでも、言葉の誤用や誤解が生じていると危惧しているようです。

 「三波春夫」といえば、『お客様は神様です』というフレーズがすぐに思い浮かぶ方が少なくないようですが、(中略)真意とは違う意味に捉えられたり使われたりしていることが多くございます。

『歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな、澄み切った心にならなければ完璧な藝をお見せすることはできないと思っております。ですから、お客様を神様とみて、歌を唄うのです。また、演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件です。ですからお客様は絶対者、神様なのです』- 「お客様は神様です」について | 三波春夫オフィシャルサイト


言葉の真意は、上記を読めば理解できるはずです。

しかし、実社会では「自分は神様だ」と思い上がったり、相手から「自分は神様だ」と主張を受ける機会もありそうですが、どうすれば良いか?

その答えが、新約「お客様は神様です」になります。


以前の記事「ビジネスを身近に!「新三方よし」理論」の中で、ビジネスの商流を以下のように記載しました。

例えば、自身がメーカーに勤めているとします。
消費者 → 運送会社(取引先) → 会社(自社)

 

同記事内では、「それぞれが利益を受け取れる商流の設計になっているか」に重点を置いて書かれています。

今回の場合はどうでしょか。

 

三波春夫氏が語るように「お客様はよろこばせる絶対者としての神様」に間違いありません。

つまり、「消費者=神様」です。

 

では、運送会社の配達員や自社の従業員はどうでしょう。

神に供物を捧げる平民? それとも奴隷や生贄(犠牲者)でしょうか?

 

新約「お客様は神様です」では、「お客様は神様です」を再解釈し、「神様、仏様、お天道様!」理論として、神様以外の登場人物の存在も明らかにしています。(三波春夫氏は自分と神様との関係で、相手は神様だと語っています)

雨や雪、猛暑の日でも重たい荷物を運んでくれる配達員の慈悲の心は仏様そのもの。(運送会社(取引先)=仏様)

で、

商品がお客様の元へ届くよう商品やお客様、運送会社を明るく照らす光はお天道様。

つまり企画実行者またはプラットフォーマーがお天道様の役割です。(会社(自社)=お天道様)


・・・・・


世界では、キリスト教の教義で「三位一体」が唱えられ、日本でも「三権分立」が採用され、権力の均衡を保っています。

少し話が大きくなりましたが、当然、お客様と従業員の間にも権力の均衡が保たれる必要はあり、また同時に、協力会社や取引先も蔑ろにされてはなりません。

 

「私は顧客だから神様だ」と発言する人や、そんな態度で接してくる人には、相手はなるほど神様だ、しかし自分はお天道様だ!といった心づもりで接し、お互いの関係に上下はなく、対等であることを意識しましょう。

「自分は神様だ」と主張したくなったときも同様です。

本来、神様と仏様はどっちが上か、偉いか? 太陽は格下か?などと考えるのがナンセンスで、そのことが理解できれば自ずと正しい振る舞いができます。

 

つまり、新約「お客様は神様です」は、神の上にも下にも人はなく、対等な存在の仏様とお天道様がいることを示した理論です。

「そうは言っても現実は、、、」の声が聞こえてきそうですが、自分自身も対等な関係でビジネス相手と向き合えることが重要です。

だからまず、そういった環境になるよう自分自身がそう振る舞うことが第一歩になります。



おわりに、先ほどの三波春夫氏のサイトの下部を見ていると、以下の一文がありました。

 「なるほど、そう言われれば、お米を作る神様もいらっしゃる。ナスやキュウリを作る神様も、織物を作る織姫様も、あそこには子供を抱いてる慈母観音様、なかにゃうるさい山の神・・・・・・」 


三波春夫氏も八百万の神の存在を示唆しているようで、「人間それぞれが神で対等だ」と捉えることもできそうです。

 

2021-05-05

ビジネスを身近に!「新三方よし」理論


三方良し

『売り手によし、買い手によし、世間によし』
近江商人の経営哲学のひとつとして「三方よし」が広く知られている。「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる」という考え方だ。自らの利益のみを追求することをよしとせず、社会の幸せを願う「三方よし」の精神は、現代のCSRにつながるものとして、伊藤忠をはじめ、多くの企業の経営理念の根幹となっている。
近江商人と三方よし(https://www.itochu.co.jp/ja/about/history/oumi.html)

 

近江商人の経営哲学として知られてきた「三方よし」の別解釈。

本来は、売り手と買い手と世間体(社会貢献)の満足につながる商いが、商売繁盛を永く続く秘訣として語られます。

しかし、経営哲学は経営者や起業家などの高い視点で語られるため、より身近に感じられるように落とし込み、ビジネスに応用できる解釈を加えたのが「新三方よし」理論です。

 

真髄は、仕事を取引先との交渉など「点」で捉えるのではなく、商流として「線」で捉えること、利益を受け取る順番を守ることです。

 

・・・・・

例えば、自身がメーカーに勤めているとします。

 

消費者 → 運送会社(取引先) → 会社(自社)

 

登場する3者は、①商品を購入する消費者、②商品を配送する運送会社、③商品を製造する自社です。(②は他の取引先へ置き換え可能です)

①消費者は商品を購入で利便性(利益)を得て、②運送会社は配送費による売上(利益)、③自社は商品販売による売上(利益)を得ています。

 

逆に不利益になるのは、①消費者が必要のない商品をうっかり買った(不利益)、②運送会社が適切な売上を立てられない(不利益)、③薄利多売で自社に利益が残らない(不利益)場合になります。

 

つまり、①に良い商品を届けようとするあまり、②に対して過剰な値引きを要求するのは良くありませんし、①に対して嘘の広告や誤解を招く表現で無駄に商品を買わせることも同様に良くありません。

 

ベンチャー企業や中小企業などの新規参入者にみられるダンピング合戦があります。

消費者への利益を最優先にするあまり、行き過ぎた低価格で自社の利益が後回しになり、結果として従業員に無理な努力(低賃金労働)を強いることになります。

短期集中で薄利多売を行い、利益や借入を原資に競争力をつける戦略も、成功すればよいですが成功も失敗もせず撤退タイミングを逃し、薄利多売状態から抜け出せない企業も見受けられます。 

当然、永く商売繁盛を続ける観点からはマイナスで、今回のコロナ禍のタイミングなどなにかの拍子で商売が立ち行かなくなります。

 

もちろん、短期的にビジネスを成立させ、「買収」や「IPO」を目的にしたり、「ブランドの雰囲気を売る」企業もあるため、一概に良し悪しは言えません。

ブランドビジネスなどは、消費者の満足と取引先への十分な利益、自社の十分な利益を満たす優良な長期商売繁盛ビジネスになり得ます。

 

例えばユニクロは、「価格の安さ」と「高機能」で参入し、当初は薄利多売の色が強かったですが、差別化やブランドの確立にも成功したため、今では「低価格」のイメージは払拭できた成功事例です。(後続は、ワークマンが挙げられます)

 

ユニクロパターンで攻めるなら、「価格の安さ」で認知を獲得したあと、「差別化要因」を確立できるかが大切なポイントになります。


・・・・・

「新三方よし」理論は、企業間の商流だけでなく自社内の流れにもあてはめることができます。

 

会社(自社) → 上司 → 自分自身

 

登場人物は、①会社(自社)、②上司、③自分自身 になります。

①会社のビジョン達成や売上・利益(利益)があり、②上司は会社の目標達成・評価(利益)を得て、③自分自身は、上司のニーズに応えることで評価=昇給昇進(利益)が得られます。

 

多くの社会人が陥りやすい罠・間違いは、「会社(①)のビジョンに共感しました」といいつつ、「上司(②)のニーズを満たしていない」場合です。

本来ならシャンパンタワーのように、上から注がれるシャンパンがピラミッド状のシャンパングラスに順々に注がれていく様が美しいですが、現実ではうまくシャンパンが流れないこともしばしば発生します。


会社のニーズと上司のニーズが噛み合っていないとき、ねじれ国会のような状態で意思決定(判断)をするときに、どう立ち振る舞ったらよいかを誤ってしまうのです。

正解は、「上司のニーズを満たしつつ転職活動をすすめる」になります。


先程から伝えている通り、「新三方良し」理論では、ビジネスの商流を大切にしています。

より俯瞰した立場で眺めると、

 

消費者 → 取引先 → 自社 → 上司 → 自分自身 


の流れがあり、流れに関わる人(ステークホルダー)が左から順に満足していれば、自然に右側にいる自分自身の利益=昇給昇進も叶えられることになります。

 

流れが歪んでいると感じる場合は、中長期的に商売繁盛が続かないか、自分自身の心身の健康に高いリスクを伴う可能性があります。

しかし、サラリーマンとして給与を貰っている以上、上司のニーズを満たすことは必須になります。

そのため、短期的には上司のニーズに応え結果を出すことに注力する(市場価値を獲得する)とともに、中長期的には、より自分自身の価値観に合致した「新三方よし」企業を探すことが正解となります。

 

ドラマなどでは、上司を飛び越え社長に進言をして、大活躍する様が描かれますが、現実で同じことをすると成功するメリットより、失敗するデメリットの方が大きくなります。

当然ですよね? サラリーマンはチーム仕事です。

会社や仕事はよくマラソンに例えられますが、飛び越えられた上司や周りにいる人たちは、一連の出来事をみて一定数は不快に思います。

会社に長く居れば居るほど、不快に思っている人たちは将来的な反対派(抵抗圧力)になりかねません。(理屈ではなく感情的な意味合いで)


そのため、不義理をせず、着実に結果を残していくには、会社の理念や消費者目線からの流れを大切にするとともに、現実的に仕事をするにあたっては、直属の上司から信頼獲得を第一義とし、業務の領域を徐々に広げていくことを理解する必要があります。

上司からの信頼獲得と会社の理念や消費者目線をうまく飲み込めないと、「意識高い系の罠(落とし穴)」にハマり、思うように仕事で結果を出せず、市場価値が得られない悪循環に陥ります。(綺麗事ばかりで結果を出せないなどと言われる)


「新三方よし」理論を理解し、多くの人が一緒に働く人たち(ステークホルダー)の満足を得られれば、世の中、今よりもご機嫌に生きられる人が増えるはずと信じています。




2021-05-03

「洗たくマグちゃん」が落とせない汚れは何だったのか?


 

4月27日、「洗たくマグちゃん」の消費者庁の措置命令を知ったのは下記ツイートでした。

 

マグネシウムのを実際に洗濯に使っていたので、ショックでしたが同時に違和感もありました。まず先に、現時点(5月3日)で公表されている情報を列記します。

株式会社宮本製作所に対する景品表示法に基づく措置命令について(消費者庁)

「洗たくマグちゃん」の消費者庁の措置命令についてお詫びとお知らせ (宮本製作所)

「洗たくマグちゃん」の新パッケージにつきまして(宮本製作所)

 

パッケージは以下のように変更されました。

<変更前>

 

<変更後>

新パッケージ

消費者庁のリリースには、以下の記載があります。

 「ご家庭の水道水がアルカリイオンの水素水に変身!洗剤を使わなくても大丈夫なお洗濯」、「部屋干しのイヤな臭いをスッキリ解消!」、「菌の抑制」及び「除菌試験により99%以上の抑制効果が確認されています。」等と表示するなど~(中略)~一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものであること。(P.39 「株式会社宮本製作所に対する景品表示法に基づく措置命令について[PDF:3.8 MB]

ここまでが事実確認になります。

で、ここからが本題です。先ほどのツイートの違和感は、

科学的な根拠がないと聞いていた商品。

の部分です。

誰に聞いていたのか、どうして発信しなかったのか、ニュースになってから後乗りしたのか、不思議でした。もちろん、「根拠がないことに根拠がない(証明できない)」から言わなかったのでしょう。しかし、宮本製作所を引きずり下ろすような発言をするのはなぜか?

「後出しジャンケン」や「環境推進者による内ゲバ」を見せられ、違和感や後味の悪さが残りました。

そこで、「景表法的にNGでも、実際に効果がない、科学的根拠なしとはならないのでは?※洗浄力は弱いので、表現が適切ではない」と反応しました。

この反応が適切だったかは微妙です。

宮本製作所も、あまりに商品が売れるものだからついつい表現を強めにしてしまったことや、外部試験場に検査に出すお金や手間を省いたために、今回のことに繋がったと予想されます。

景表法違反を擁護するつもりはありませんが、少なくとも、

  • 環境への低負荷
  • お肌に優しく洗剤の臭いは無臭に近い
  • 弱アルカリ性で酸性(皮脂)を洗浄する

の3点は効果があり、「洗剤いらず」や「99%抑制」の表現は根拠不十分で不適切でした。

つまり、景表法違反と環境貢献の部分は線引して発信してほしかったです。

言い換えるなら、宮本製作所=悪と断罪せず、経過を注視してほしかったですし、「前々から根拠なく不当な商売を行っていた」のような印象を与える表現は避けてほしかったです。

他の方の反応をみても、「洗たくマグちゃん」をきっかけに目覚めてる人もいます。

景表法違反(優良誤認)のため、根拠もなく誇大表示をしてしまったことは反省すべき点で、再発防止も当然必要なことです。

ただ、宮本製作所が「洗たくマグちゃん」に込めた「大量に洗剤を使わなくても汚れは落ちる」のメッセージは、環境負荷軽減への提言として的を得ており、多くの人の意識を変えました。

弱アルカリ性の水による洗浄力を知った人たちは、洗剤を使わなくても(または微量でも)十分に満足できる人ことを理解し、今後も自分の判断で使い続けるはずです。

宮本製作所の「洗たくマグちゃん」をきっかけに生まれた素晴らしいエコムーブメントにも目を向けてほしいのです。

是々非々で議論するに辺り、人間の感情は時として邪魔をします。

今回、表現が行き過ぎてビジネスライク(売上重視)になってしまった点と、「洗たくマグちゃん」が示した可能性については、分ける必要があります。

良い点と悪い点を踏まえ発言するには、ツイッターは140字と文字数は足りず、十分な時間や判断を伴わずに投稿できるため、残念な意識のすれ違いが起こります。

「冷静に」や「遅いインターネット」や「ソースが大事」といったところで、人間の感情的にすれ違いは起こってしまうネットの汚れのようなものです。

できることがあるとすれば、根気よく事実確認をして性急に答えを求めない姿勢を取り続けることでしょうか。 

事態が良い方向に向かうことを願います。

ただ、「環境団体が消費者庁に訂正を要求」に対して、宮本製作所が変な反応の仕方をしていたので、そんな事はいいから、早々に試験場から検査結果を受け取り、開示してほしいところです。 (環境市民団体の「食品と暮らしの安全基金」は宮本製作所に対して好意的な団体です)

いま、些末なことでグズグズ対応していると、本当にインチキ事業者の烙印を押されかねません。地球にとっても、消費者にとっても残念なことです。

今後、適切な対応がなされるかどうか、見届けたいです。

・・・・・

また、「洗たくマグちゃん」問題に触れる際は、メーカーと代理店の関係(広告費を大量投下してもらっている側の忖度)も重要です。

広告予算が僅かな宮本製作所が、連日、雑誌やTV、ドラッグストアなどで認知獲得に成功していると、快く思わない巨大資本側からの圧力は当然、予想されます。

白竜」ではヘルシー過ぎて取り上げられない題材ですが、巨大資本による圧力などの陰謀論が生まれるぐらい、画期的な(洗浄力と環境負荷のバランスの取れた)商品です。

ちなみに現在、我が家の洗濯洗剤は下記を使用しています。 

マグネシウムを洗濯ネットに入れて使用しているのと、合成洗剤を併用しています。

カネヨ石鹸は合成洗剤ですが、なるべく環境にもお肌にも優しいものを選択しています。