昨日、ツール・ド・フランス第20ステージが終わりました。
終了時点でマイヨ・ジョーヌ獲得したのは、チーム・UAEエミレーツのタディ・ポガチャル(スロヴェニア・21歳)。
第9ステージから第19ステージまで、マイヨ・ジョーヌを死守し、そのまま総合優勝するかと思われたユンボ・ビスマのエース、プリモ・ログリッチを破ってのステージ優勝&マイヨ・ジョーヌ獲得でした。
どのくらい凄いかというと、観ている人のほとんどがログリッチのマイヨ・ジョーヌ獲得を確信し、現地スポーツ紙などのメディアも揃ってログリッチ優勢を報じていました。
もちろん、ポガチャルを応援している私自身でさえ、今回のステージと総合優勝はログリッチかな、と諦めかけるぐらい圧倒的な状態。そんな中での逆転劇でした。
まあ、現実的に考えたら、ログリッチのTTの強さは圧倒的ですからね。
— sam (@oz_jp) September 19, 2020
しかし、ポガチャルの成長も期待して、見届けたいです。
どこまで肉薄できるか❗️#TDF2020
もともと、ポガチャルを応援するきっかけは、応援していたガビリアがUAEに所属したタイミングで、チームメイトだったポガチャルの存在を知りました。
既にその頃から、期待の新人としてマークされ、昨年もグランツールのブエルタ・ア・エスパーニャで総合3位+ヤングライダー賞を獲得するなど、好成績を収めていたポガチャル。
当時は、ガビリアの良き相棒として応援していましたが、ブエルタでの走りを観て驚愕させられ、不調のガビリアに代わり2020年のUAEエースとして、ツール・ド・フランスに出場することになり、ますます夢中になっていました。
今年のツールは、とくに山岳向けのコースと言われ、近年にトレンドであった山岳コースブームに、さらに拍車がかかった様子でした。
第2ステージで、早くも1級山岳2連続。
第8ステージでは、超級山岳が登場。
そして今大会、1、2を争う過酷さの第15ステージ。
今回の勝負の分かれ目となった(と私は予想する)第17ステージ。
3:42辺りからご覧頂きたいのですが、このとき明らかにポガチャルは辛そうに走っていてペダルも重いです。
そこをいくと、ロペス(当時、総合4位)のペダル回りは軽快で、それに対してログリッチも警戒して反応したとしても、おかしくありません。
ただ、それが結果として、脚への負担の蓄積になり、第20ステージでの結果に繋がったんじゃないかと因果つけたくなる展開でした。
運命の第20ステージ。 TT(タイムトライアル)
偶然か、第17ステージに調子の良かったロペスも、この日のTTでは不調気味。
あのときの山岳で一気にタイム差をつけようと、エネルギーを使い果たしてしまったと思われるほど精彩を欠いた走りでした。
ログリッチも同様で、不調ではないですが、TT 強者にしてはペダル回りが少し重いように感じられ、前半から疲れの色が濃かったように思います。
そして後半の山道で、異変が明確になっていきます。
通常は、TT の場合はタイムトライアル用のTTバイクで一気に平坦を駆け抜けますが、今回は山岳込み(5.9km、最大勾配20%)の約36kmコースとなるため、山岳直前でバイク交換(F1のピットストップを思わせる攻防)ありの、珍しい展開でした。
始めはバイク交換のことを知らずに、ポガチャルもログリッチもメカトラかと焦ってしまいましたが、その後にさらに焦ることになりました。
メカトラでもあったか、もしくは体調不良かと思わせるぐらい、ポガチャルとログリッチのタイム差が開いていき、最終的には1分56秒差をつけました。
総合では57秒あった差が、逆に59秒上回るタイム差で総合ジャージを獲得したポガチャル。
ログリッチもタイムを見れば、ポガチャルとは1分56秒差ついてますが、ステージ順位は5位(146人中)で文句なしのタイムだったといえます。
UAEエミレーツの面々。
レース直後こそ、
「第17ステージのラストでは、ログリッチのスパートでタイム差も40秒差から57秒差まで広がり、それはこのTTへの布石だったのか?」
「山岳ジャージを失ってでも、マイヨ・ジョーヌへの執念を見せたポガチャル」
と感じていましたが、結局のところポガチャルがツール中にさらに能力を開眼させたのかもしれません。
勝者と敗者、互いに検討を称え合うポガチャルとログリッチ。
スロヴェニア・ダービーとして世間を賑わせた2人でしたが、マイヨ・ジョーヌになるのは常に1人。あらためて、ツール・ド・フランスの、ロードレースの過酷さを感じました。
レース後ヘトヘトでバイク上で項垂れるポガチャル。
ログリッチのゴールとともに公式タイムが発表され、チームスタッフとともに歓喜乱れるポガチャル。
ゴール後の放心状態のログリッチ。
しかし、インタビュー中に乗り込み、互いに検討を称え合う姿に、敵チームながら人格者として、それまでマイヨ・ジョーヌを着ていた王者としての誇りが垣間見えました。
ちなみに、ポガチャルは、諸々のポイント獲得を合わせて、総合・山岳・新人と4賞中3賞を獲得。
スプリント賞は、アダム・イェーツ。
こちらは、サガンが今年でMTBへ転向といわれているのでラストでしたが、マイヨ・ヴェール獲得ならず。
気になるのは敢闘賞です。
個人的には、ボーラかサンウェブの中から選ばれてほしく、「ヒルシ」「クラグ・アンダーセン」が本命です。
本日のパレードランで終わってしまうのが寂しくなるほど、今年も思い出深いツール・ド・フランスでした。久しぶりに推しのチーム、選手が勝ったように思います。